知人数名がSNSで推奨しているのを見て読みました。本書に記載されている「独自のカテゴリーを作ってトップを取る」という考え方自体は、他のマーケティングの本でも何度か目にしていましたが、本書は実践するための具体的な流れがまとまっていて、手を動かしやすい素晴らしい内容でしたので紹介します。
4Cモデルで考えを整理できる
この本で最も印象に残ったのは、1. Customer Problem 顧客が抱える「潜在課題」を見極める、2. Category Value 顧客にとっての「独自価値」を定義する、3. Category Keyword 顧客が価値を「想起できるキーワード」を定義する、4. Category Perception 顧客が価値を「直感できるイメージ」を定義する の4Cモデルでステップを明確に説明している部分です。
たとえば、顧客の潜在課題を発見するための以下の質問は実務でもすぐ使えそうです。
- 顧客が直面する顕在課題を引き起こしている「ボトルネック」は何か?
- いま起こっている社会の「時代の変化」は何か?
- 顧客が当たり前だと諦めていた「トレードオフ」は何か?
- 業界の「構造的問題」は何か?
p94-97
これらの視点で顧客課題を整理することで、競合との差別化を超えた新しい価値提案ができそうだと感じました。
ワークシートまで用意された実用性
これまで読んできたマーケティング本と比べて特徴的だったのは、カテゴリーを作って広めていくステップを具体的かつ網羅的に整理してくれている点です。1. 課題啓蒙、2. 信頼獲得、3. 接点最大化のステップ、3つのフェーズごとに整理された合計14の打ち手など、カテゴリーを定義したあとの広め方について丁寧に開設されています。14の打ち手の部分はPR・展示会・イベントグロースからタクシー/エレベーターでの広告など幅広く紹介されています。
打ち手の部分は先日ご紹介した以下の本もあわせてご覧いただくと参考になるかと思います。
「トラクション スタートアップが顧客をつかむ19のチャネル」
書籍の最後の部分で戦略策定の5ステップについてワークシートも用意して説明してくれているため、実践のハードルを大幅に下げてくれます。
AIの普及でカテゴリー戦略はより重要になる可能性が高い
AIから推奨されたいくつかの製品から選択するのが今よりも普及していくことを考えると、カテゴリー戦略の重要性は今後も増していくと考えられます。AIに推薦してもらえる少数の製品の中に自社を入れられなければ、存在を認知されてないまま顧客は他社製品を選んでしまうとういシチュエーションが増えていくためです。
そのため、デジタルマーケティングにおいても、カテゴリー戦略を意識しながら広告やコンテンツを作っていくことが大切になります。認知度を上げて、指名検索やSNSなどでの言及(サイテーション)を増やすという観点と、想起されやすい印象に残る独自カテゴリーは相性が良いと感じました。
USPが曖昧でメッセージに悩む人への必読書
サイトエンジンでは「ラクテス」というテストを自分で作って運用するという新しいジャンルのプロダクトを運営しています。会社ごと、職種や役職ごとにまったく異なる筆記試験を実施するという習慣は一般的ではないので、マーケティングで新しい製品カテゴリーを作り出す必要性を感じていました。一方で、カテゴリーのネーミングをわかりやすく端的に設定することはできていないですし、広めることもできていません。このように自社SaaSのマーケティングメッセージが曖昧になっていると感じている私のようなマーケターにとってピッタリの本でした。
製品の企画から携わっているマーケター、新規事業の立ち上げ担当の方々にとってもきっと役に立ちますのでおすすめです。理論だけでなく、具体的な実践方法まで含めて体系的に整理されており、読後すぐにアクションに移せる内容です。様々な実例や参考文献からの引用も含まれていて、とてもわかりやすいです。冒頭から事例をいくつも並べていて、読みやすさを重視して構成されたのであろうことが伝わってきます。
「差別化はできているのに伝わらない」「新しい価値を提案したいが方法がわからない」といった悩みに対して、明確な解決の道筋を示してくれます。独自カテゴリー創造への具体的な第一歩を示してくれる実用書でした。
書籍紹介ページ
急成長企業だけが実践するカテゴリー戦略 頭に浮かべば、モノは売れる | 書籍 | 株式会社クロスメディア・パブリッシング
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