コンテンツ制作ブログ

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コンテンツマーケティングを部門ごとに独自運用するデメリットと部門間の調整方法

2022年9月27日

組織が大きくなるほど、コンテンツマーケティングを実施するときに部門ごとに運用することが増えます。それぞれが独自にオウンドメディアを運用することで、情報が断絶される、重複するなどの様々なデメリットが発生します。以下によくある失敗例と対策方法をまとめます。

似たコンテンツを並行して複数部門が制作してしまう

事業部の中にマーケティング機能も含まれている場合、各事業部が独立してマーケティングや営業戦略を考えています。そのため、異なる事業部が同じテーマでコンテンツを制作してしまうことがありえます。

公開済みのコンテンツは他部門のものも含めてサイト内を検索すれば見られますが、まだ公開されていない制作途中のコンテンツはお互い共有されていないことが多いです。部門間で異なるCMSを使っていたり、別のベンダーに外注したりしているため、すべてが共有されているケースはほぼありません。

そのため、似たコンテンツを2つ以上の部門が並行して制作することが起こるのです。特に法律・規制などの変化への対応など、比較的緊急性の高いトレンドに関連したテーマのコンテンツで発生しがちです。

クラウド上で管理できるエディトリアルカレンダーのようなものを作り、他部門の予定も含めて横断してキーワードで検索できるようにすることで重複を回避できます。

事業部から制作スケジュールを広報や経営企画などに提出する形にして、全体を一元管理する方法もありますが、事前確認や許諾を必要にすると、ものすごくスピードが落ちるので推奨しません。基本的には各部門が勝手に進めつつ、調整役が入るといった程度が望ましいです。

複数の事業部がSEOで同じキーワードを狙う同ドメイン内競争が発生する

一般キーワードのSEOでは同じドメインが1つだけしか表示されない仕組みになっているため、事業部間で競争することになってしまいます。

この問題の解決策としては、複数事業部を共通して管轄する役人などの責任者が調整する、リード情報の部門間売買の仕組みを作るなどの対策があります。

自社内の都合ではなく、あくまでもサイト利用者であるお客様にとってどういう情報設計になっているのが理想なのかを考え、それにあわせていく姿勢が必要です。そのためには、マーケティング機能を複数事業横断で担当する責任者が必要になります。事業部を取りまとめている役員直下の組織が担当するなどの対応策です。

また、事業部間でバッティングしてしまうのは、リード情報のサイロ化が原因になっている可能性があります。部門間でリード情報が共有されないため、それぞれが独自に似たような手法でリードを集めようとしてしまうのです。たとえばAという事業部の制作したページでリードを獲得したなら、その顧客の課題解決に貢献できそうなB事業部やC事業部にも共有するのが理想です。

このとき、A事業部の持つ予算でページを制作しているので、リード共有時にB事業部やC事業部などから対価をもらうようにします。部門間取引の仕組み、評価制度などへの落とし込みが必要になります。

顧客体験を考えると、同時にいくつもの事業部から営業を受けるのは混乱のもとになるため、連絡する順番や流れなどをルール化していく必要はあります。たとえばA事業部からの提案が失注になったタイミングではじめてB事業部から連絡するといった流れです。

部門間の協力が増えていかない

機能別組織になっていて、マーケティング部と営業部がわかれているようなときに、部門間の協力が上手くいかないことが起こりえます。

たとえば、マーケティング部門がコンテンツ制作のために営業部門に取材を依頼するようなときに、一時的に協力を得ることはできるかもしれません。これが毎週定期的にお願いしたいみたいな要求をしたときに受け入れられるでしょうか?もしあなたが受け入れてもらえるだろうと思える会社のマーケティングを担当しているなら、おそらくかなり恵まれた環境にいます。たまに不定期で実施するならまだしも、毎週定例で手伝うのは難しいと断られるような会社も多くあるからです。

なぜ協力が実現しないかというと、目の前の数字目標や自分の終わらせるべきタスクで手一杯だからです。直近の営業目標が達成できるかわからない状態で日々もがいている状態で、他部門の協力で毎週時間を割くことに快く協力してくれる人ばかりではありません。目標必達の意識が高い人ほど、協力に慎重になるのではないでしょうか。仮にマーケティング部門に協力することが、将来のリード獲得つまり営業部門の利益にもつながると心から信じていたとしましょう。それでも成果が出るまでに時間がかかるため、協力しても短期的には自分の目標には貢献してくれません。

これを解決するには、評価の方法を変えるしかありません。コンテンツ制作へのアイディア出しをする数を決めるとか、マーケティング部門と営業部門で協力して制作するコンテンツ数を決めるなどして、そこから発生したリードや売上を営業部門側の評価にも反映させるようにします。

評価の仕組みを変えれば、自然と協力の数が増えます。

関連づけるべきコンテンツなのに設置場所がバラバラになる

事業部ごとにサブディレクトリやサブドメイン、別ドメインなどでオウンドメディアが乱立してしまうことがあります。この問題は組織の規模が大きいほど発生します。

サーバやドメインなどのインフラ周りからCMS、制作するベンダーまで含めてそれぞれが勝手に独自のコンテンツ設置場所を構築してしまうのです。.co.jpドメインのガバナンスをきかせるために、広報部門などがレギュレーションやガイドラインを厳しくした結果、それらを避けるために別ドメインで構築する事業部が出てきて逆にガバナンスが効かなくなってしまうみたいな逆効果になっている事例も散見されます。

設置場所がバラバラになってしまうことで、お客様が関連したコンテンツを見つけられなくなってしまう問題が発生します。CMSはもちろん、導入されているマーケティングオートメーション(MA)、レコメンドエンジンなどのツール類で異なるものを採用しまうことがあります。これによりデザインを統一してシームレスに行き来してもらうUI/UXを作ることが難しくなりますし、関連したページ間を上手くリンクさせあうことも手間がかかるようになります。

SEOの観点からも大きくマイナスになります。既存のドメインを使っていれば、実現していたはずの集客が、設置場所が新規ドメインになったことで大きく減ってしまう機会損失は本当によく見かけます。

データが断絶する

複数部門が独自に選定して、CMS、アクセス解析、マーケティングオートメーション(MA)、SFA、CRMなどのツールを入れると、データ連携ができなくなってしまうことがあります。本来は同じ用途であれば1つのツールを共有して全部門が利用するのが望ましいです。データを一元管理できないと、いろいろな弊害が発生します。たとえばマーケティングオートメーションツールでは、一度Cookieと個人の紐づけができれば、誰がどのページを見たのか細かい行動履歴がわかります。もし部門ごとに異なるマーケティングオートメーションツールが入っていれば、A部門の管轄するページを見ていた情報はB部門には伝わらないため、適切なコミュニケーションを取る機会が減ってしまい顧客体験に悪影響を及ぼします。

他部門にデータを共有しないというサイロ化も発生しがちです。各部門が独立してデータを収集しはじめると、そのデータは自部門の予算で獲得したものなので、他部門に見せないといった政治が発生してしまうことがあります。

全員が全体最適で考えられていればそんなことは発生しないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、社内データを閲覧しようとしたのに権限がなかったという経験は多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか。個人情報保護や異なる部門が勝手にお客様に連絡することを防ぐなど、制限したほうがよい理由を挙げようと思えばたくさん出てきます。

データが共有されないことによる機会損失は非常に大きいです。特にリード情報が適切に共有されていないことは、1件の契約の価値が非常に高いBtoB企業では毎年数億~数十億もの損失になっている可能性があります。会社全体を統括して変化させられる経営層が全社のシステム設計をするような専門のチームを作ってトップダウンで関与するのが有効な解決策です。ボトムアップでは改善できません。なぜなら、それぞれの部門には、複数部門のツールやベンダーを横断して変更する権限がないためです。情報システム部門やマーケティング部門のような第三者的な事業部を横断して機能提供する組織が全体像を設計できればいいですが、権限範囲が明確に設定されていないと、事業部との対立が発生してしまいます。

顧客体験を最適化するという観点からゼロベースでデータの収集、蓄積、保管、分析活用の方法を検討するのを推奨します。

ノウハウを蓄積しにくい

A部門では当たり前のように運用されているSEOの基本的なルールが、B部門ではまったく守られていないみたいなノウハウの断絶も発生します。SEOにかぎらず、ユーザー調査方法、編集体制の構築、アクセス解析、UI/UXの改善など様々な分野で部門によって得意不得意が発生します。これは2つの意味で損をしています。

  1. すでに獲得しているノウハウを一部の部門が利用できていないことで、本来得られたはずの売上が減っているという機会損失
  2. 他部門がすでに保有しているノウハウを獲得するために、再度人件費やベンダー(SIer、制作会社、コンサルティング会社など)への支払いが発生している無駄

「自社内の誰かに聞けばわかることを、外部ベンダーにお金を払って教えてもらっている」みたいなことは大きな組織ほど起こりやすいので、部門横断で上手くノウハウを蓄積していくことが大切です。

グループウェアやチャットツールなどを導入し、コミュニケーションのルール設計をしておくのがおすすめです。たとえば部門横断して同じチャットルームに入っていれば、そこに質問を投稿することで他部門の誰かが回答してくれることがあります。

無駄なコストが発生する

部門ごとに異なるベンダーに発注することで本来不要だった費用がかかっています。ベンダーとは、ツール提供企業、システム開発会社、ホームページ制作会社、コンサルティング企業などです。

すでに制作済みのものを新規に制作しなおすことでも無駄なコストが発生しています。たとえば、導入事例インタビュー記事を書くときに、他部門が制作したレイアウト・デザインなどのテンプレートがあれば、それを踏襲してそのまま使えばいいところを、ゼロから新規に制作してしまうといった無駄があります。CMSなどのシステムも一度どこかの部門が開発したものがあれば、それを他部門でも転用すればコスト削減になるところが、再度開発しなおすといったことが発生しています。

すでにあるものを使ってなんとかする姿勢が必要です。そのために社内資産に何があるのかを可視化します。中長期にわたって業績に貢献する資産となるか、二度と使われない使い捨ての無駄になるかは、情報共有の方法にかかっています。

命名規則や整理のルールを決めて、検索しやすい形でクラウドストレージなどに保管することを推奨します。

まとめ 組織の構造もしくは評価方法を変化させる

いろいろとデメリット、よくある失敗例などとその対応策についてまとめました。結論としては、複数部門のマーケティングを管掌する機能別組織を作る、営業部門とマーケティング部門、または関連した複数事業部門の上に同じ責任者(役員など)を立てて統括するなどの組織変革のアプローチがもっとも有効だと考えます。

いきなり組織変革のような大掛かりなアプローチは実行可能性が低いと考える企業の方は、評価方法を変えることを推奨します。具体的には他部門貢献にあたる行動・プロセスと成果を評価に含めるということです。これによって部門の存在意義が少し変わるので、自然と行動が変わります。

毛塚 智彦

この記事を書いた人

毛塚 智彦

2006年からデジタルマーケティングを開始し、2008年にサイトエンジンを創業しました。 SEO、コンテンツマーケティングが得意です。立ち上げた直後のメディアから、数千万PVあるようなポータルサイト・ECサイトまで、幅広く関与してきました。 業務ではマニュアル作成などの仕組みづくり、事業立ち上げ、採用などを担当しています。 Twitter

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