弊社のようにお客様の課題に対して「これやりましょう」という提案は新人にとっては結構ハードルが高いです。そこで自社のサービス情報などのナレッジをもとにうまく提案サポートをしてくれるものがないかな、と探していてGoogleのAIサービス「NotebookLM」にたどり着いたので、その活用方法を紹介します。非常に便利ですが「新人君が即戦力!」にはならないのでご注意を。
NotebookLMとは?
NotebookLMはGoogleが提供する生成AIノートツールです。主な特徴は以下の通りです。主な特徴は以下の通りです。
- ドキュメントを読み込み、内容を把握
- 自然言語で質問でき、答えを返してくれる
- 資料間を横断して、要点を比較・要約可能

Googleのドキュメントやスライドの他、PDFやテキスト、特定のウェブサイトやYouTubeが情報として登録できます。
例えば、商品パンフレット、FAQ、提案資料、ケーススタディなどを読み込ませておけば、特定の課題を抱えた会社に対する営業提案などについて、一定の回答が得られます。現状は無料で、Googleアカウントがあればだれでも使えます。(2025年5月1日現在)Google LabsというGoogleの実験的なサービスの扱いなので、いつ有料化されるかわかりませんが・・・
ノートツールだけあって、与えられた情報・ナレッジからの出力はめっぽう強いのですが、ウェブ検索機能はありません。ウェブ検索もさせたい場合はChatGPTやPerplexityなどと併用しましょう。
ということで、NotebookLMに頼れば、以下のようなお手伝いをしてくれちゃいます。
企業内の情報をもとに回答を生成する仕組みは多くの会社の注目を集めるものになっています。Difyなどを活用して、ナレッジベースの生成AIアプリを作成することも考えましたが、結果「NotebookLMでできちゃうじゃん」というのが結論なのです。Notionでも同じことができるのでは?と言われそうですが、個人的には複数のインプットに対して横断的に答えを生成するにはNotebookLMが最適だと思います。
NotebookLMを活用した営業提案の流れ
既存の営業資料の中から提案を考案してくれるので、自社にとって無理のない提案ができるのが特徴です。
STEP 1:自社資料をNotebookLMにまとめて登録
活用効果を高めるには、事前に以下のような資料をまとめてNotebookLMに登録しておくのがおすすめです:
- 製品パンフレット、価格表
- サービス仕様書、提案テンプレート
- 営業FAQ、導入事例
- 技術資料(セキュリティ、構成図など)
これにより、提案準備や質問に対する回答精度が格段に向上します。以下は弊社の資料をアップしている状態のサンプルです。

STEP 2:ヒアリングで顧客の課題を明確にする
NotebookLMを使う前提として、「顧客がどんな課題を感じているか」は営業が直接ヒアリングしておく必要があります。AIの活用において重要なのは「インプット」です。ここが不足していると、AIの出力も的外れになってしまうことがあります。顧客からヒアリングすべき情報は、事前に「ヒアリングシート」などを作成しておけばそれで事足りるので手を抜かないようにしましょう。これはAIではなく人の手でやる必要があるので手を抜かないようにしましょう。
ヒアリングした内容の分析や、内容整理、推測される原因のピックアップなどが必要な場合は、推論が得意なChatGPTのo3やClaude 3 Opusなどがお勧めです。
STEP 3:収集した情報をもとに、解決策となるサービスを提案してもらう
特定した要因に対して、「どの自社サービスが解決につながるか?」をNotebookLMに尋ねます。
プロンプト例
以下は弊社のクライアント情報です。
#クライアント名
ラクテス株式会社
# 企業概要
ラクテス株式会社は、オンラインでのスキルチェックテストを提供するSaaSサービス「ラクテス」を運営している。このサービスは、採用試験や社内研修、スキル評価など、企業の人材評価プロセスを効率化することを目的としている。ラクテスは、700種類以上のサンプルテストを備えており、企業の多様なニーズに対応している。
# ターゲットユーザー
ラクテスの主なターゲットユーザーは以下の通り:
中小企業の人事・採用担当者:採用候補者のスキルや適性を客観的に評価したい企業。
研修担当者:社内研修後の理解度チェックやスキルアップの進捗を測定したい企業。
フリーランスや業務委託先の評価を行いたい企業:外部パートナーのスキルを事前に確認したい企業。
# 最終目的
新規利用ユーザーを安定的に獲得すること。
# 課題
サービスの認知度向上:ターゲットユーザーへの認知が不足しており、潜在顧客へのアプローチが課題。
SEO対策の強化:検索エンジンからの流入が少なく、ウェブサイトの訪問者数が伸び悩んでいる。
集客用コンテンツの不足:ユーザーの関心を引くコンテンツが不足しており、リード獲得に繋がっていない。
ユーザーエクスペリエンスの改善:ウェブサイトの導線や情報設計が最適化されておらず、コンバージョン率が低い。
これらの情報を踏まえ、ソースにある弊社サービスの提案書を作ってください。アウトプットは以下の通りとしてください。
・課題1つごとに提案を区切る。
・課題に対処すべき優先順位をつけ、優先順位の高い順番から提案する。
・提案する内容は
課題
課題の要因として主に考えられる原因
提案するサービスとその概要
サービスの金額
サービスの提案理由と弊社サービスの強み
期待される成果(お客様のベネフィット)
参考となるお客様事例(1つ)
とする。
以下のような感じでアウトプットしてくれます。

サービス資料を基に、お客様の課題の原因はどんなものが想定されるのか、どの課題にどの自社サービスを当てていけばいいのか、提案時に自社のどんな点をアピールすればいいのか、といった基本的な提案が作成されます。
探したりまとめたりするのが面倒な過去事例やお客様事例も、資料の中から探し出してくれます。ウェブサイトにお客様事例などがある場合は、ChatGPTなどのウェブ検索が可能なツールで調べるのもおすすめです。
これで基礎となる営業提案が出来上がります。経験値の低い新人が営業提案するためのたたき台として考えると最低限の点が取れているものが出来上がります。
作成した内容はメモに起こし、ブラッシュアップの作成やその後の提案資料作成に活かす
チャットが繰り返されるほどに過去に生成した回答が埋もれてしまうので、重要な出力情報はメモとして保存していくようにしましょう。提案内容をメモで保存しておき、提案資料のスライドを作成できるGensparkや、GammasといったAIに読み込ませることで、提案資料のスライドを素早く作成することもできます。(次回AIを活用した提案資料の作り方として紹介します)
チャットのブロックごとに「メモに保存」というボタンができるので、それをクリックすると、メモとしてチャットから独立して保存されます。


NotebookLMを使った営業提案サポートの注意点
出来上がるのは60点程度の提案だと思ってください。顧客の業界や、事業状況、資金状況、市場環境、サービスの強みなど、様々な情報を加えると、課題の要因がここで出てきた以外にも見つかる可能性や、そもそも想定していた原因が的外れだった、ということもあり得ます。
提案はあくまで新人のトレーニングや、たたき台作成の為に活用し、自社の経験や追加のインプット情報をもとにブラッシュアップする必要があります。
NotebookLMを使ったその他の営業サポート案
自社サービスを提案する前のヒアリング項目を考える
ヒアリング項目が属人的になっていたりしませんか?ベテラン社員ならまだしも、新人にとっては情報収集も難易度の高いものです。
「自社サービスの○○○○をお客様におすすめすべきかどうかを判断するための情報収集をしたい。質問項目と、そこからどのような判断ができるかを教えて」
とNotebookLMに聞けば、自社サービスに即したヒアリング項目を作ってくれます。
過去の提案の中で参考になるものを教えてもらう
過去にお客様に提案した資料をソースに追加した、プロジェクトを登録したプロジェクトを作成しておき、過去の提案資料の中から参考になるものを教えてもらうこともできます。
作成した提案内容をメモとして保存し、過去の提案資料のプロジェクトに新たにソースとして取り込みます。
その後、
「ソースにある過去参考資料の中から、今回の提案の参考になりそうな資料や、提案の中に入れたほうが良い情報があれば教えて」
と聞くだけで、過去の提案資料のいいとこどりができます。
サービスについて想定される質問を考えてもらい、回答のロールプレイをしておく
NotebookLMの右側のStudioには、ソースからよくある質問を考えるためのボタンが用意されています。これを選ぶだけで、ソースをもとに、どのような質問が想定されるのかを考えてもらうことができます。

AIに学ばせ、AIから学ぶ。NotebookLMをコーチやサポーターとして使い倒そう。
NotebookLMは、サービス資料を横断的に読み取り情報を提示してくれます。営業提案に必要な「仮説構築→提案設計」という思考プロセスを、最低限のレベルで実施してくれます。ここからどれくらい真に顧客の問題に迫った提案が作れるかが営業の見せ所となりますが、取り急ぎベースとしては合格点なのではないでしょうか。
新人にとっては、自分の思考をまとめたり、助言をくれる存在として心強い存在になってくれると思います。
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