Web広告では、Google広告やMeta広告をはじめとする複数媒体で扱うデータ量が年々増加しています。
その結果、「分析 → 判断 → 施策立案」というサイクルが、これまで以上に短いスパンで求められるようになりました。本記事では、Googleが提供するGemini for Google Workspaceとスプレッドシートを組み合わせ、複数媒体のデータを横断的に分析・考察しながら、マーケティング業務を効率化・高度化する方法をご紹介します。
従来のスプレッドシート活用との違い
従来のスプレッドシートは、「データを整理する場所」「数値を集計・可視化するためのツール」として活用されてきました。運用データを貼り付け、手作業でグラフを作成し、分析コメントを加える——いわば、人の操作に依存した“静的”な作業ツールだったといえます。
特に、Google広告とMeta広告のような複数媒体のデータを横断的に扱う場合、以下のような変化が起きます。
- データ理解のスピード
自然言語で「9月のYouTubeとInstagram広告のCPAを比較して」と問いかけるだけで、Geminiが即座に分析を実施。 人が関数やピボットを組む必要がなくなります。 - 仮説立案のサポート
「CTRが低下した要因を教えて」と指示すれば、Geminiが媒体別の傾向をもとに要因候補を提示。複数チャネルをまたいだ比較も自動で行えます。 - 表現・共有の自動化
Geminiが要約コメントとグラフを生成し、Googleドキュメントやスライド形式での共有までサポート。レポート作成にかかる時間を大幅に短縮できます。
Geminiで実現できる主なマーケティング業務
Geminiの強みは、スプレッドシート上で自然言語による指示だけで、媒体横断のデータ分析を再設計できることです。
Google広告・Meta広告を中心にしたマーケティング業務では、次のようなプロセスに活用できます。
- データ取得・整理
Google広告、Meta広告、Instagramなど各プラットフォームのレポートを取り込み、Geminiで媒体名・配信面・手法などを分類・整理します。 - 初期分析(自動要約)
「9月のCPA推移を要約して」や「Google広告とMeta広告のCTRを比較して」などの指示で、
Geminiが数値傾向と注目ポイントを自動抽出。 - AIによる仮説・提案生成
「YouTube広告の成果改善案を3つ挙げて」などと依頼すれば、Geminiがデータに基づいた施策アイデアを生成。改善の方向性を素早く掴めます。 - レポート・共有の自動化
Geminiが要約文やグラフを自動生成し、Googleドキュメントやスライドでの共有までワンステップ。複数媒体の結果をまとめた横断レポートの作成も容易です。
Gemini×スプレッドシートで広告分析やってみた
マーケティング施策ごとによくあるシチュエーションでの使い方を実際のプロンプト、スクリーンショット付きでご紹介します。今回は広告を例にしていますが、幅広いマーケティング業務の中でご自身の業務に活かすための指示や考え方の参考になればと思います。
使用データ

データの整理
広告の生データは、担当者ごとに作り方が異なり、そのままでは分析に適していない場合があります。
そのため、まずはデータ整理から始めましょう。この例では「キャンペーン名」に複数の情報が含まれており分かりづらい場合があります。要素ごとに分割し、分析しやすい構造に整えます。
プロンプト例:「キャンペーン名」「媒体」を対象(例:ブランドやプロダクト)、媒体(例:google広告かmeta広告)、媒体詳細(例:youtube, facebookなど)、手法(例:動画、リターゲティング、ディスプレイ)のように分けてください

左下の挿入を使用するとそのままシートを更新することが可能です。カーソルを選択しているセルをはじめとして挿入されるため、今回の場合はA1にセルを選択した状態で挿入します。また、挿入プレビューの確認やコピーして手動で更新することも可能です。
媒体横断で成果(CPA)を確認・考察
広告運用において、媒体単体での数値比較は容易ですが、複数媒体を横断して全体最適を判断することは難しい課題のひとつです。この分析では、一定期間におけるキャンペーンごとの成果データを整理し、手法ごとにまとめて横断的に考察を行います。
媒体別の成果だけでなく、広告フォーマットや配信手法(動画・ディスプレイ・リスティングなど)単位で俯瞰して見ることで、
- どの手法が最も効率的にリードを獲得できているか
- 媒体ごとに得意な手法・訴求軸が異なるのか
- 全体の広告投資配分をどのように最適化すべきか
といった洞察を得ることができます。
プロンプト例:対象×手法でCPAの考察をして

特に動画広告は1つの動画を複数媒体で使いまわすという運用の都合上、管理画面だけで媒体ごとの数値を見ても続けるべきか判断しづらいですが、このような分析によって総合的な判断ができるようになります。
また、考察の内容も優秀です。ざっくりとした指示でも基礎的な考察を行ってくれます。この量を数秒で考察してくれるのは非常に助かります。

商材と施策の相性を確認する
商材と手法の相性を見てみましょう。前項が「媒体横断の分析」だったのに対し、こちらは「商材×手法」の観点で、どの組み合わせが最も成果を出しているかを特定する分析です。
同じ手法でも商材によって成果が異なることは多く、
- 高単価商材は動画広告よりも検索連動型広告が効果的
- 認知を目的とする商材ではディスプレイ広告の方が費用対効果が高い
など、商材特性に応じた最適手法の選定に役立ちます。
プロンプト例:対象×手法ごとの相性を知りたいです。手法ごとの平均と各対象×同手法の数値を比較・考察してください

対象×手法ごとの相性がわかる表も簡単に作成可能です。
プロンプト例:手法ごとに各対象の数値と手法平均がわかるようにしてください。各対象には平均に対して何倍かという数値も入れてください。

改善アクションへの展開
ここまでの分析によって、媒体・商材・手法の関係性を多角的に把握できるようになりました。
次のステップは、得られた知見をもとに改善施策を立案・検証していくフェーズです。
たとえば、以下のようなアプローチが考えられます。
- 成果が高い「商材×手法」の組み合わせに予算を再配分し、短期的なCPA改善を図る
- 成果が低い組み合わせでは、クリエイティブ・訴求軸・LPの見直しを行い改善仮説を立てる
- 動画やリスティングなど手法間のシナジーを踏まえて、顧客の検討フェーズに応じたメディア配分を最適化する
ここでも「この結果をもとに改善すべきポイントを3つ挙げて」「予算を最適化するための配分案を提案して」といった指示で改善の方向性を提示しさせることで、担当者はデータ整理や集計に時間をかけることなく、判断と行動に集中できます。
まとめ
Web広告運用は、データ量の増大と意思決定のスピード化という課題に直面しています。
Gemini for Google Workspaceを活用することで、
- 分析の自動化による時間短縮
- 多媒体・多商材データの横断的理解
- 改善施策の迅速な立案
を同時に実現できます。
Geminiを取り入れることは、単なる効率化ではなく、チームの思考プロセスを進化させる投資といえます。
