商談でサービス名や機能を覚えているだけでは、顧客の課題解決につながる提案は難しいものです。顧客のニーズを「パターン」として認識し、「なぜそのサービスが効くのか」を論理的に説明できることが、提案の質を左右します。
本記事では、営業担当者が身につけるべき「顧客ニーズ×サービスマッピング」の考え方と、チームで実践できるワークショップの進め方を紹介します。当社でも新規入社の営業担当者向けに本ワークショップを実施しており、その経験をもとに具体的な進め方や実施時のポイントをまとめました。
(※本記事ではWebマーケティング支援サービスを例に解説しますが、考え方自体はどの業界・商材にも応用可能です)
なぜ「パターン認識」が必要なのか
顧客の追っているKPIより優先すべき指標はないか
顧客から「このKPIを改善したい」と明確にして相談いただくことが多いです。しかし、そのKPIがお客様の現状において本当に優先すべき指標かどうかは別問題です。
営業・コンサルタントは、KPIをそのまま受け取るのではなく、より優先度の高い課題がないかを判断し、必要に応じて別のKPIを提案する役割を担います。
パターンを知ることの価値
顧客のニーズは千差万別に見えますが、実際には共通するパターンが存在します。このパターンを事前に体系化しておくことで、商談の場で顧客の言葉から課題の本質を素早く見抜き、適切なサービスを結びつけられるようになります。
もちろん、すべてのケースがパターンに当てはまるわけではありません。しかし、パターンを知っておくことで大半のケースには対応でき、例外的なケースに遭遇したときも「どこがパターンから外れているのか」を起点に思考できます。
顧客の課題を見つけるステップ
- ニーズのパターンを知識として認識・体系化する — 個別のニーズから共通パターンを見出し、知識として蓄積します
- 商談でニーズを探索する — 顧客との対話で真の課題を特定し、蓄積したパターン知識を適用して優先度を判断します
- 自社のサービスを理解する — 機能・特徴・顧客にとってのベネフィットを把握します
- ニーズと製品をマッチングする — 「なぜこのサービスが効くのか」を説明します
- 新しいニーズを見つけてストックする — 商談の過程でニーズに合致した製品をすぐ出せなかったときに新しいニーズを記録し、どう製品と関連づけるか・新しい製品を開発するべきかを検討します
ワークショップの進め方
全体構成(2.5〜3時間)
| パート | 内容 | 時間 |
|---|---|---|
| 導入 | 目的・ゴール共有 | 5分 |
| Part 1 | 顧客KPIの洗い出し | 15分 |
| Part 2 | ニーズと提供サービスのパターン認識 | 15分 |
| まとめ | 気づきの共有 | 10分 |
ゴール設計のポイント
「答えを覚える」のではなく「考え方を身につける」ことを目指します。正解を教わるのではなく自ら思考する時間を確保し、個人ワーク→発表→他者の視点を取り入れるサイクルで進めます。最終的には、商談で「なぜそう考えたか」を説明できる力を養います。
Part 1:顧客が気にしているKPIを洗い出す
ワークの進め方
- 個人ワーク(5分):顧客が改善したいと思っていそうなKPIをテキストで書き出します(最低10個)
- 発表・共有(7分):全員が一斉に書いたものをチャットに貼り付けます。その後、口頭で説明します
- 全体整理(3分):ファシリテーターが補足・グルーピングします
ねらい
顧客のニーズがどのような数字やKPIに現れるかの「パターン」を認識し、自分の中にメンタルモデルを構築します。このメンタルモデルが、今後の商談で「このお客様にとってどのKPIが重要なのか」という直感を養う土台になります。
サイトエンジンで実施した際に起きたこと
この新人営業担当者向けにワークを実施した際、以下のような傾向が見られました。
- 主に扱う自社サービスであるBtoBコンテンツマーケティングに直結するKPI(セッション数、CV数、CVRなど)は出やすいが、広告関連のKPI(CPA、CPCなど)が抜けがちだった
- Webサイト内の指標に偏り、商談化率・成約率・売上といった「問い合わせ後の数字」まで視野を広げられていない人がいた
- KPIを構造化できている人とできていない人の差が明確に出た。売上を起点に逆算して分解できている人ほどたくさんKPIを出せていた
ファシリテーターは、参加者の回答を見ながら「顧客が本当に気にしているのはWebサイトに閉じた数字だけではない」という視点を補足するとよいでしょう。
【例】Webマーケティング支援における顧客KPIカテゴリ
- オーガニック検索流入数、AI検索での露出、CVR、リード獲得数、指名検索数・ブランド認知、SNSエンゲージメント、メール施策の成果、商談化率・営業効率、マーケティングROI、コンテンツ内製化率、業務工数・運用コスト、サイトUX・回遊率、コンテンツ資産の量・質
Part 2:KPIとサービスのマッピング
ワークの進め方
- 個人ワーク(5分):Part 1で出たKPIに対して、自社のどのサービスがなぜ効果的かを書き出します
- 発表・共有(10分):各自がチャットに一斉に投稿したあとに、それぞれ発表します
ねらい
顧客の「このKPIを改善したい」というニーズに対して、どのサービスが提案候補になり、なぜそのサービスが効果的なのかをパターンとして整理し、知識ベースを構築します。
施策が「なぜそのKPIに効くのか」の理由を必ずセットで考える
サービス名を挙げるだけでは不十分です。「なぜこのサービスがこのKPIの改善に効くのか」を言語化して、スムーズに説明できるようにしておくことで、関心を持ってもらえる可能性が高まります。
【例】Webマーケティング支援におけるマッピング
| KPI | 提案候補サービス | なぜこのサービスが効くのか |
|---|---|---|
| CVR | LP制作 | 訴求力向上 |
| CVR | 診断コンテンツ | 自分ごと化を促進 |
| リード獲得数 | ホワイトペーパー制作 | ダウンロードによるリード獲得 |
ワークショップで出た参加者の気づき
当社でワークショップを実施した際、参加者から以下のような声が挙がりました。
- 「知識としては知っていても、商談の場で瞬時に思い浮かばないことに気づいた」
- 「売上から課題を掘り下げると、インサイドセールスとの連携や受注数まで商談の範囲が広がることがわかった」
- 「自社で支援できないことも含めてアイデア提供すべきだが、範囲の切り分けが難しい」
- 「普段扱っていないサービスも視野に入れて、引き出しを広げる必要性を感じた」
こうした気づきを参加者同士で共有することで、チーム全体の視野が広がる効果も期待できます。
商談で実践するためのポイント
仮説を立てておく
商談前に「このお客様はどのKPIを目標として使っているか」を仮説立てしておきます。Webサイトごとのビジネスモデルの違いを大量に見続けることで、Webサイト以外の業務フローも思い浮かぶ状態になり、商談化率、案件化率、受注率、客単価、LTVなどが推測できるようになると理想的です。
なお、顧客が認識している課題だけでなく、その背景にあるより根本的な課題や、関連する別の課題を想定しておくことで、提案の幅が広がります。
自社の得意領域と組み合わせる
自社が苦手な領域の要望があっても、関連する自社サービスを組み合わせて提案できます。
たとえば、当社はSNS運用は得意ではありません。しかし、顧客から「SNSでの認知拡大」を求められた場合でも、診断コンテンツや調査コンテンツを制作してSNSでシェアされやすいコンテンツとして提供するといった形で、自社が貢献できる可能性がある部分がすぐ思い浮かぶ状態にしておくことは大切です。
このように、顧客の課題に対して自社が直接対応できなくても、関連するステップで貢献できる方法を考え、自信を持って説明することが重要です。
提案の幅を広げる
自社では扱えなくても、世の中の選択肢を知っておくことで顧客との会話の幅が広がります。自社が解決できる部分と他社が優れている部分を組み合わせた提案も有効です。
継続的に引き出しを広げる
知識のアップデート方法
- 最近販売した事例や効果をチーム内で積極的に共有する
- 検索しやすい形で資料をストックする
- 業界動向のキャッチアップ(新聞・雑誌・書籍など)
- 実際に手を動かして自社商材に触れてみる
ワークショップは一度実施して終わりではなく、定期的に繰り返すことでパターン認識の精度が高まります。新しいサービスや事例が増えるたびにマッピングを更新し、チーム全体で共有していくことをおすすめします。
まとめ
商談において、単にサービスの内容を覚えて説明できるようになっているだけでは不十分です。重要なのは、顧客のニーズというパターンを正確に認識し、顧客が挙げたKPIが本当に最優先かを判断したうえで、「なぜそのサービスが課題解決に効果的なのか」を論理的に説明できることです。
すべてのケースがパターンに当てはまるわけではありませんが、パターンを知っておくことで大半の商談には対応でき、例外に遭遇したときの思考の起点にもなります。本ワークショップを、営業チーム全体のパターン認識の精度を高める参考にしてください。
