サイトエンジンブログ

デジタルマーケティング、コンテンツマーケティング、
データ分析などに関するお役立ち情報を発信

Google Marketing Live 2025をコンテンツ担当者目線で解説|AI時代の設計力とは?

2025年5月26日

Google Marketing Live2025をコンテンツ担当者目線で解説|AI時代の設計力とは?

日本時間2025年5月22日の深夜、『Google Marketing Live 2025』が開催されました。このイベントは、一言でいうと「AIによってマーケティングが大きく変わろうとしている現状を示すイベント」でした。最新モデルのGemini 2.5 ProやImage FX、Video FX(V3)などが紹介され、これらの生成AIツールがコンテンツ作成の時間を大幅に短縮できる様子も見ることができました。

この記事では、イベントで語られた内容の中から「webマーケティング」、特に「コンテンツマーケティング」に取り組んでいる方々にお伝えしたいポイントをピックアップしています。情報収集の参考にしていただければと思います。

検索の再定義:AIは”質問”の質を変え、”答え”を奪う

「検索結果にたどり着かない」時代へ

以前は検索する際、キーワードを慎重に選ぶ必要がありました。でも今は、AIによってGoogle検索が大きく進化しています。テキストだけでなく、画像、音声、動画を使った検索ができるようになったり、会話のように検索できるようになったりしています。ユーザーの意図をより深く理解し、複雑な質問にも答えられるようになって、将来的には「検索に作業をお願いする」こともできるようになりそうです。Google Marketing Live 2025では、これらについて「AIは検索にスーパーパワーを与えている(AI is giving search superpowers)」という表現で紹介されていました。

その中でも注目したいのが、検索結果の上部でAIが概要を示してくれる「AI Overviews(AIO)」です。これは過去10年間で最も成功した機能のひとつとされています。2024年にスタートして以来、すでに200以上の国と地域で毎月15億人以上の方が利用していると発表されました。

また、アメリカやインドなどでは、「AI Overviewsが表示されることで、特定の種類の検索において、ユーザーの関心やその後の行動(サイト訪問など)が全体的に活発になった」という効果も見られているそうです。つまり、AI Overviewsが表示される検索結果ページからのクリックは、ウェブサイトにとって質の高いものになり、ユーザーも訪問したサイトで長く滞在してくれる可能性が高いということです。

これを聞くと「ぜひAI Overviewsに自社のコンテンツを載せたい」と思うところですが、今回のライブでは、AI Overviewsに表示されるための具体的な方法については触れられませんでした。ただ、2025年2月25日更新のGoogle検索セントラルには「どのリンクが表示されるかは、Googleのシステムが自動的に判断します。表示対象となるために特別にすべきことはなく、Google検索の基本事項に記載されているように、検索への表示に関する通常のガイダンスに従っていれば大丈夫です」と書かれています。

さらに、AI Overviewsの機能を拡張して、より高度な推論やマルチモダリティ(テキストだけでなく画像など複数の情報を理解・処理すること)、会話のようなやり取りなどを検索内の新しいタブとして提供する「AI mode」の展開がアメリカでスタートしています。AIによる検索の進化は、これからも続いていきそうです。

AI時代の検索と広告

AI時代の広告主のために、Googleは3つの分野に力を入れています。

①AI powered discovery
例えば「犬を飛行機に乗せる方法」と検索すると、航空会社の規約や役立つヒントなどを表示するだけでなく、Geminiがショッピング需要を予測して、「航空会社が認めているペットキャリー」を広告として表示してくれる、といったことができるようになります。AI Overviewsでの広告表示はすでにアメリカのデスクトップ、および一部の英語圏のモバイルで始まっており、AI modeでの広告実験も進んでいます。

②Multimodal understanding
検索はすでにテキスト、画像、動画、音声などからでも可能になっています。そして以前より2~3倍長く、複雑な文章が検索クエリとして使われるようになっています。 言葉以外の情報も含めて収集することで、これらの組み合わせから、ユーザーが次に必要としそうなものを予測できるようになってきています。つまり「適切なタイミングで最適な広告を提供する」ための情報も蓄積され、今後活用されていくことが予想されます。

③Agentic action
これはまだ初期段階の分野ですが、「消費者が行動を起こすのを検索がサポートする」というものも紹介されました。例えば「価格目標を設定すると、価格が下がった時に通知してくれる」「購入をお願いしておくと、適切な色やサイズなどで代わりに購入してくれる」といったエージェント的な機能や、「商品の画像をアップロードすると、その商品が自分に似合うかをリアルに表示してくれる試着機能」などが、これから私たちの生活に溶け込む機能になるかもしれません。

これから重要なのは「判断材料」となるコンテンツ

Google Marketing Live 2025では、AI OverviewsやAI Modeによって、ユーザーが検索結果にたどり着く前に「知識」を得て満足してしまう未来がはっきりと描かれました。検索クエリがより長く、文脈的・会話的になり、Geminiモデルがユーザーの意図を予測して、次の需要に先回りして応答するようになるため、従来のキーワードベースのSEOでは対応しきれなくなる局面がすぐそこまで来ています。

このとき重要になるのが「連鎖設計」です。ユーザーの最初の疑問に対して単一の答えを出すのではなく、「次に気になりそうなこと」「深掘りしたくなる角度」まで設計して、連続的にクリック・滞在・探索したくなる構造を持たせることが求められます。

“回答”ではなく”判断材料”を提供する

つまり、「これが正解です」と断言する”回答型記事”ではなく、「なるほど、選択肢はこう分かれるのか」と納得してもらう”判断材料”の提供が、AIが選び、ユーザーが求めるコンテンツの姿です。

例えば、「中小企業が生成AIを導入するメリットとは?」というトピックであれば、「メリット3選」だけではなく、「活用に成功した企業」「想定外の落とし穴」「業種による向き不向き」など、自分に合うかどうかを判断するための”情報のグラデーション”を提供する視点が大切です。

AIが要約・表示する場合でも、その情報に「濃淡」があることで、ユーザーがさらに詳細を見に行くきっかけになります。”結論”よりも”解釈の余白”をつくることが、結果として読まれるコンテンツを生む鍵になるでしょう。もちろん、AIに拾われやすい構造化(hタグ、リスト、明確な小見出し等)にも引き続き気を配ることが必要です。

広告と計測の進化

広告や計測の分野でも、AIは進化しています。

Power Packの3本柱(PMAX / AIMAX / Demand Gen)

Googleが提供する最先端のAI技術は、広告でも成果を発揮しています。今回のGoogle Marketing Liveでは、次世代広告ソリューションである「Power Pack」が紹介されました。Power Packは「PMAX」「AIMAX for search campaigns」「Demand Gen」の3本柱で構成されています。

①Performance Max (PMAX)
GoogleのチャネルとAIのすべてを一つのキャンペーンに統合したものです。2024年だけで90件以上の改善が行われ、コンバージョンが10%以上増加しました。広告主からのフィードバックを受けて、PMAXがフォーマットやチャネル全体でどのように機能しているかを正確に確認できるようになりました。

②AI Max for search campaigns (AIMAX)
ランディングページ、広告、既存のキーワードリストから学習して、何を販売しているか、いつ広告を表示することが適切かを推測します。簡単にいうと、既存の検索キャンペーンへの「ワンクリック拡張機能」です。 AIMAXは言葉だけでなく意図を理解し、リアルタイムでその検索に応じた見出しを生成できます。AIMAXのベータ版利用者は、主に完全一致およびフレーズ一致キーワードを使用するキャンペーンと比較して、同様のCPAまたはrROASでコンバージョンを27%増加できたというデータも紹介されました。

③Demand Gen
YouTubeなどの視覚中心のプラットフォームを活用して、新しい興味や関心(Demand)を引き起こします。まだブランドを知らない視聴者にもYouTube広告の関連性を高め、意図を認識して、リアルタイムでユーザーが次に何を求めるかを予測できます。この機能は過去1年間に60以上の改善がされ、1ドルあたりのコンバージョンが前年比26%増加しました。

この中でも、特に動画領域での広告の発展は注目すべきです。YouTubeはよりショッピング向けになっており、購入準備ができているユーザーを特定して、直接チェックアウトに誘導する新しいシグナルなども活用されています。

YouTubeクリエイターとファンの間の信頼関係をブランドの利益につなぐためのツールも提供されています(Creator Partnerships Hub)。キーワードやジャンルでYouTubeチャンネルを検索して、パートナーシップの費用見込みを確認したり、クリエイターと作成した動画をリンクして広告として実行したり、クリエイターがブランドをタグ付けした動画を確認・プロモーションしたりできます。また、有料動画とオーガニック動画のパフォーマンスを並べて確認できる機能も提供されています。

計測ツールの進化

計測ツールGA4(Google Analytics)も改善が加えられています。クロスチャネル測定や、Snap、TikTok、Pinterestなど、多くのチャネルを比較した分析ができるようになります。GA4内でクロスチャネル予算編成ツールも利用できるようになります。

また、導入途中のAIシステム「Agentic solutions」についても紹介されました。キャンペーンのコンバージョンが見られない原因をAgentが診断して、タグの不足を発見して設置を提案することができており、さらに学習が加えられれば、より複雑なケースを処理できるようになります。

また、測定全般において、強力なファーストパーティデータ(顧客データ)が重要であると強調されています。データマネージャー、Google タグ ゲートウェイ、データマネージャー APIといったツールを使うことで、顧客データをGoogleのAIが効果的に活用できるようになり、結果としてAI搭載のキャンペーンなどがより賢く機能して、広告のROI(投資対効果)を最大化することにつながります。

  • データマネージャー…ウェブ、ストア、CRM、アプリなど、すべてのデータソースを接続する窓口のようなもの
  • Google タグ ゲートウェイ…ウェブサイトやアプリからのデータ収集をより効率的かつ高精度にするためのツール
  • データマネージャー API…CRMなどのビジネスシステムからのデータを簡単に連携させるための技術的な接続口

広告に求められる”可変性”と”多様性”

AIが主導するキャンペーン(PMAX、AIMAX、Demand Gen)では、クリエイティブの選定・組み合わせ・表示の最適化がすべてAIによってリアルタイムに行われます。では、AIはどんなアセットを”選びたくなる”のでしょうか?

Googleはこの点について、以下のような指針を示しています。

  • 多様なパターンを持ったアセット(画像/動画/見出し/説明文など)
  • 明確な目的に沿った構成(例:新規顧客獲得、再訪促進など)
  • あらゆる場面で表示できる柔軟性(例:Shorts用の縦動画や静止画)

特にDemand Genキャンペーンでは、製品フィードと組み合わせた動画アセットが、前年比で2倍以上のコンバージョン価値を生んだという成果が共有されました。また、Asset StudioやGenAIによるクリエイティブ自動生成機能の進化により、パターンと量を備えたアセットの準備はこれまでより簡単になっています。

つまり、検索向けに1種類の画像とテキストだけを用意するのでは不十分で、AIが「ユーザーの意図」と「掲載面のフォーマット」に応じて最適な組み合わせを選べるよう、クリエイティブ側が“可変性”と”多様性”を持っておくことが大切です。

今後は、「この1枚が刺さる」よりも、「この10パターンが試せる」が勝ち筋になる── そんな思考の転換が、AI時代の広告運用の基本となっていくでしょう。

生成AIによるクリエイティブ:量産時代の「差」をどう出す?

Asset StudioとGen AI動画の進化

前段で可変性と多様性の重要性をお話ししましたが、広告で使うクリエイティブを手動で大量に作成するのは大変です。GenAIモデルは、この課題を解決するために作られたものです。Google Marketing Liveでは最新のGen AI動画モデルも紹介され、高品質な動画広告を短期間かつ低コストで制作できた事例が示されました。

AIはクリエイティブ作成だけでなく、舞台裏でも機能します。Google AdsとMerchant Centerで近日ロールアウトされる機能として、先手を打ったクリエイティブアイデアとアセット生成が紹介されました。例えば、父の日プロモーションの提案、製品、推奨割引などが自動的に提示され、広告主はレビュー、調整、公開を自由にコントロールできます。

これらのAIツールにより、これまで不可能だったことが可能になったといえます。短時間で素晴らしいアセットを作成し、必要なあらゆる場所でスケールして、ビジネスのパフォーマンスを大幅に向上させることができます。

“量産”はAI、”意図と関係性”は人が握る

Google Marketing Live 2025で繰り返し強調されたのは、生成AIは「作ること」を請け負うが、「何を・誰に・なぜ届けるか」は依然として人間の責任であるというメッセージです。

Asset Studioのようなツールを使えば、製品画像をアップロードして、説明文を入れるだけで、AIがプロフェッショナルな画像や動画を即座に生成してくれます。動画のフレーム拡張や、ボイスオーバーのみで作られる高品質な広告も登場し、「見栄え」だけなら誰でも作れる時代になりつつあります。

だからこそ重要になるのが、「なぜその素材なのか」「誰のどんな状況に向けて出すのか」「それがどんな体験の文脈にあるのか」といった意図設計と関係性の文脈です。Googleも、今後の広告クリエイティブは、AIによる候補生成と人の戦略的判断のハイブリッドであるべきだとしています。

マーケターに求められるのは、「このキャンペーンの目的は何か」「どのステージのユーザーに届けたいか」「AIに判断を委ねるのはどこまでか」といった設計思考です。つまり、「制作」から解放された分、私たちは”戦略の演出家”としての腕が試されることになります。

まとめ:AIで「作る力」が民主化された今、求められるのは「つなげる設計力」

Google Marketing Live 2025では、AIがあらゆる領域(検索やショッピング、クリエイティブ、測定……)に深く踏み込むようになり、結果としてマーケティングの可能性を大きく広げていることが示されました。でも、これは単に「便利なツールが増えた」という話ではありません。むしろ、誰もが高品質なアウトプットを作れるようになった今こそ、マーケターに求められるのは、技術やチャネルを”つなげる力”といえるでしょう。

さまざまな便利な機能を単体で使うだけでは、真の価値は引き出せません。ユーザーの意図や行動文脈を理解して、「いつ」「どこで」「何を」届けるかを設計する視点が欠かせません。検索・スクロール・動画視聴・購入がシームレスにつながる現代においては、分断された施策を統合して、ストーリーとして顧客体験をデザインする力こそが差別化の鍵になります。つまり、「作る力」から「つなげる力」への転換です。

これこそがAI時代のマーケターが持つべき、最も人間的な能力といえるでしょう。

一次情報を利用したコンテンツ作成をしてみませんか?
「アンケート調査コンテンツ制作」について、詳しくはコチラ▼

金子 菜未

この記事を書いた人

金子 菜未

CONTACT

お問い合わせ