はじめに:AIは「賢い」けれど、複雑な手順は苦手?
「ChatGPTやClaudeに指示を出せば、スプレッドシートへの出力まではやってくれるようになった」
「でも、『検索して、中身を読んで、分析して、さらに別のツールで処理する』といった、複雑な業務フローはまだ人間が介在しないといけない」
皆様も、日々の業務でこのように感じたことはないでしょうか?
これまでの生成AIは、単発のタスクやデータ出力は得意になりましたが、社内ツールを横断するような複雑な「業務フロー全体」を任せるには、まだハードルがありました。
しかし、2025年11月にn8nが実装した新機能「Instance-level MCP」によって、状況は一変しました。
一言で言えば、「Claude(頭脳)が n8n(手足)を使って、複雑な業務フローを丸ごと実行してくれる」時代の到来です。
この記事では、実際に弊社で作成した「SEO記事構成案の自動作成ワークフロー」を公開し、マーケティング・営業・広報の現場がどう変わるのか、その実践的な活用法を解説します。
参考記事:
「Instance-level MCP」とは?(わかりやすく解説)
技術的な難しい話は抜きにして、何ができるようになったのかを解説します。
これまで、業務自動化ツール「n8n」は、決まった時間に決まった動きをする「工場のラインロボット」のような存在でした。しかし、今回の連携によって、n8nは「Claudeの道具箱」へと進化しました。

これまで: 人間がボタンを押して自動化を開始する。
これから: チャットで「〇〇について調べて」と頼むと、Claudeが「それなら、あのツール(ワークフロー)を使えばいいな」と判断し、勝手にツールを使って作業を完了させる。
つまり、AIがただのチャットボットから、「臨機応変に道具を選んで仕事をする、熟練のアシスタント」に進化したのです。
n8nについて詳しく知りたい方はこちら:n8nで始める社内業務自動化|Zapier超えの柔軟性と実践例
【実践事例】SEO記事の「競合調査~見出し作成」を完全自動化
論より証拠。実際に弊社が作成し、運用している「SEO競合調査ワークフロー」をご覧ください。
課題:SEO担当者の悩み
これまでは、1つのキーワードで記事構成を作るために、以下の作業を「手動」で行っていました。
- キーワードでGoogle検索する
- 上位10サイトを1つずつ開く
- 見出し(H2、H3)や文字数をExcelにコピペする
- 傾向を分析して、一次情報を入れて構成案を作る
これだけで1記事あたり数時間かかることも珍しくありません。
解決策:作成したn8nワークフロー
この作業を完全自動化するために組んだn8nのフローがこちらです。
▼ n8nワークフロー全体図

処理の流れ:
- Google Search: 指定されたキーワードで現在の検索結果を取得。
- Scraping(Apify): 上位サイトのHTMLにアクセスし、Hタグ(見出し)やディスクリプションを抽出。
- AI分析(Gemini): 抽出した膨大な競合データをAIに読ませ、網羅的な記事構成案を作成。
- Googleスプレッドシート: 最終的な結果をスプレッドシートに自動保存。
実際のClaudeとの対話デモ
このワークフローを連携させたClaude Desktopでのやり取りです。
人間: 「n8nの『SEO競合調査』ワークフローを使って、キーワード “AIツール 業務効率化” の記事構成案を作成してください。」
Claude: ワークフローの実行が完了しました!キーワード「AIツール 業務効率化」に基づいた記事構成案が作成されました。
人間: 「当社で実施した〇〇の導入事例と、実際のテンプレート活用例を追加してください。」
Claude: 承知しました。一次情報を加えることで、競合との差別化ができ、SEO評価も高まります。追加後の構成案で記事を執筆する際は、お声がけください。
▼ 実際のチャット画面

この仕組みのメリット
このワークフローを活用することで、以下のような便利な使い方が可能になります:
- 競合が「何を書いていて、何を書いていないか」をClaudeが把握した状態で対話を継続できる
- Claudeに修正指示を出し、その内容をもとに構成案を修正してもらう
- そのまま記事を執筆させる
など、SEO記事作成の一連のプロセスを、Claudeとの対話だけで完結させることができます。
なぜ「AIチャット」だけではダメなのか? n8nを使う3つの理由
ここで、鋭い方はこう思うかもしれません。
「最近のClaudeはWeb検索もできるし、Googleスプレッドシートとも連携できる。なぜわざわざn8nを使う必要があるの?」
確かに「単発の検索」ならAI単体でも可能です。しかし、「業務として回す」ことを考えた場合、n8nを組み合わせることに決定的なメリットがあります。
① 「手順の標準化」と「再現性」の確保
AIチャットのみだと、その時のプロンプトやAIの挙動によって、調査の深さやフォーマットが毎回変わってしまいます。
n8nを使えば、「Google検索APIで上位10件を取得し、必ず指定のスクレイピングツールを通す」という手順を固定できます。
誰がいつ指示を出しても、同じ品質・同じフォーマットでアウトプットが出せるため、チーム業務として成立します。
② AIが苦手な「ディープなWebアクセス」を補完
AIのブラウジング機能(Search)は便利ですが、JavaScriptを多用したサイトや、Bot対策が厳しいサイトでは読み込みに失敗することが多々あります。
n8n連携では、「スクレイピング専用ツール(Apifyなど)」を物理的に実行させるため、AI単体では見れないページの情報も確実に取得できます。
これにより、分析の基礎となるデータの欠損を防げます。
③ 複雑なツールチェーン(連鎖)の実行
「検索して終わり」ではなく、「検索結果をCRM(Salesforceなど)と照らし合わせ、既存顧客ならSlack Aに、新規ならSlack Bに通知する」といった条件分岐を含むフローは、AIチャット単体では不可能です。
n8nを「手足」として使うことで、Claudeはこうした複雑な社内フローの「司令塔」になることができます。
つまり、「定型的な重い処理はn8nに任せ、最後の意思決定やクリエイティブな提案だけをClaudeにやらせる」という分業こそが、最強の時短術なのです。

マーケ・営業・広報での活用アイデア集
SEO以外にも、この「Claude + n8n」の組み合わせは様々な業務に応用可能です。
① 【営業】商談前の「深堀り企業リサーチ」
指示: 「明日訪問する『株式会社〇〇』について調べて。当社のCRM(HubSpotなど)に過去の接触履歴がないか確認し、最新ニュースと合わせて提案の切り口を考えて」
n8nの動き: 企業HPスクレイピング + HubSpot検索 + ニュース検索。
メリット: 「CRM検索」と「Web検索」を同時に行わせることで、社内・社外情報を統合した準備が一瞬で完了します。
② 【マーケティング】コンテンツ再利用(YouTube→ブログ/SNS)
指示: 「このYouTube動画のURLから、ブログ記事とTwitter投稿(3パターン)を作って。画像生成AIでサムネイル案も作っておいて」
n8nの動き: 動画字幕取得 → 要約 → Claudeで記事化 → DALL-E 3やMidjourneyのAPIを叩いて画像生成。
メリット: テキストだけでなく、画像生成ツールまで一連の流れで操作させることができます。
③ 【広報・PR】リスク検知と論調分析(エゴサーチ自動化)
指示: 「今週の『自社ブランド名』に関するSNSでの評判を分析して。ネガティブな投稿が急増していたら、緊急度を判定してSlackに通知して」
n8nの動き: X(Twitter)やGoogleニュース検索 → 感情分析 → 「ネガティブ率〇%以上」という条件分岐 → Slack通知。
メリット: 単なる検索だけでなく、「条件分岐(If)」を使った監視業務を任せられます。
まとめ:AIを「使う」から「AIと働く」フェーズへ
今回ご紹介した「Instance-level MCP」は、一見難しそうに見えますが、実は以下の3ステップで導入可能です。

- n8n: 自動化したいフローを作る
- Claude Desktop: PCにアプリをインストールし、設定ファイル(JSON)を追加するだけ
- 連携: n8nのアクセストークンを繋げば完了
中小企業こそ、少人数で大きな成果を出すために、こうした「AIエージェント」を活用すべきです。
単純作業や複雑なツール操作はAIに任せ、私たちは「顧客との対話」や「戦略の立案」といった、人間しかできない業務に時間を使いましょう。
サイトエンジンでは、こうしたAI×自動化ツールを活用したデジタルマーケティング支援を行っています。「自社ならどんな業務が自動化できるか?」など、ご興味のある方はぜひお気軽にご相談ください。
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