社内情報をもとに生成AIで記事企画をたてる

2025年12月1日

「記事を書かなければいけないのに、具体的なネタ(テーマ)が思いつかない」

もしそう感じているなら、それはクリエイティブな能力が足りないわけではありません。「社内にある情報の使い道」を知らないだけかもしれません。

日々蓄積される商談の録画データ、問い合わせメールの履歴、アクセスの多い過去記事。これらを見返すと、そこには「お客様が具体的にどんな言葉で質問したか」「何が理解できずに困っていたか」という、記事企画の「答え」そのものが記録されています。

しかし、人間が膨大なログを読み返してアイデアを探すのは現実的ではありません。だからこそ、AIを使います。

記事制作において、AIは「書く」ために使うものだと思われがちです。しかし、真価を発揮するのは「企画」のフェーズです。AIは、人間には見えないデータのパターンを見つけ、顧客が本当に求めている情報を抽出する道具として極めて優秀だからです。

この記事では、私が実際に現場で行っている「社内の一次情報」と「外部のトレンド」を組み合わせ、勝てる企画を効率よく引き出す方法を紹介します。

特別なスキルは要りません。必要なのは、手元のデータとAIだけです。

企画のネタ元は2つしかない

記事企画のネタ元は、シンプルにこの2つです。

  1. 自社の一次情報(商談、問い合わせ、アクセスログなど)
  2. 外部のトレンド情報(ニュース、SNS、競合の動きなど)

独自性(オリジナリティ)を出したいなら、注力すべきは圧倒的に「① 自社の一次情報」です。ここには、まだ世に出ていない「生の声」があるからです。

まずは、この一次情報を活用する具体的な2つの方法から解説します。

【一次情報編】社内データから企画を引き出す

あなたの会社には、活用されずに眠っている「企画の種」が山ほどあります。これを使わない手はありません。

1. 商談議事録 × NotebookLMで「隠れたニーズ」を見つける

顧客との商談は、情報の宝庫です。「ここが分かりにくい」「実はこういうことで困っている」という言葉は、そのまま最強の記事テーマになります。

しかし、過去の議事録をすべて読み返す時間なんてありませんよね。そこでAIに「分析」を丸投げします。

具体的な手順

まず、ZoomやGoogle Meetで録画した商談データを文字起こしします。次に、そこから社名や個人情報など特定につながる情報を削除(匿名化)してください。

準備ができたら、Googleの無料ツール「NotebookLM」を使います。

ここでのコツは、「似たシチュエーションの商談」を10件ほどまとめてAIに読ませることです。 1件ごとに分析するのではなく、「検討初期の顧客」や「リプレイス検討中の顧客」といった塊で分析させることで、個別の事情ではなく「そのフェーズの顧客が共通して抱える悩み」が浮き彫りになります

また、フェーズではなく業界、ユースケースなどで区切るのもおすすめです。

データを渡したら、次のように聞いてみてください。

プロンプト例

読み込んだ議事録群を分析してください。顧客から繰り返し出ている「要望」や「質問」の上位3つを抽出し、それらを解決するためにWebサイトに掲載すべき記事のテーマ案を作成してください。

期待できるアウトプット

この分析を行うと、記事化すべき「顧客のリアルな姿」が3つの視点で見えてきます。

  • 具体的な質問・要望: 「〇〇機能はあるか?」といった疑問。これがそのまま「Q&A記事」や「機能解説記事」のネタになります。
  • 解決したい課題(動機): 機能の話の裏にある「なぜ導入したいのか」という根本的な悩み。これが「課題解決型記事」のテーマになります。
  • 導入を阻む懸念点: 「現場が使いこなせるか」といった不安要素。これを解消する記事を書くことで、コンバージョン率を高められます。

うまくいかない時は?

  • 回答が抽象的すぎる: 読み込ませる議事録の数が足りないか、顧客の属性がバラバラすぎます。最低でも5件、できれば属性を絞って読ませてください。
  • 「要望はありません」と言われる: 聞き方を変えましょう。「顧客が不安そうにしている点は?」「何度も確認している点は?」と、感情や行動に着目させるとうまくいきます。

2. アクセス上位ページ × 生成AIで「次の切り口」を見つける

アクセスが多いページは、すでにニーズがあると証明されたテーマです。しかし、そこで満足してはいけません。そのテーマの周辺には、まだ書かれていない「関連ニーズ」が必ず隠れています。

自分では「もう書き尽くした」と思っていても、AIに整理させると「この視点が抜けています」と容赦なく指摘してくれます。

具体的な手順

GA4などの解析ツールから、よく読まれている記事や、コンバージョンに貢献している記事のタイトル・URLをリスト化します。

それをChatGPTやClaudeなどのAIに渡し、まずは「グルーピング」を依頼します。

プロンプト例:ステップ1

以下の記事リストを、読者の「閲覧意図」や「興味を持ちそうなサービス」が共通するものでグルーピングしてください。

自分では意識していなかった共通点で整理されることがあります。次に、そのグループごとの「抜け漏れ」を探します。

プロンプト例:ステップ2

各グループの読者が次に持ちそうな「関連ニーズ」を網羅的に出してください。その上で、現状の記事リストではカバーできていない具体的な記事テーマを提案してください。

期待できるアウトプット

この分析からは、アクセスを集めている記事の「次に読者が知りたくなること」が可視化されます。

  • 深掘りテーマ(概要→詳細): 「〇〇とは」という概要記事が読まれているなら、AIはその中の特定の項目について「もっと詳しく知りたいはずだ」と深掘り記事を提案します。
  • 横展開テーマ(関連トピック): 「A」について調べている人が、高い確率で関心を持つ「B」というテーマを見つけ出します。
  • 状況別テーマ(一般論→個別): 全体向けの解説記事に対して、「初心者向け」「管理者向け」といった、ターゲットを絞り込んだ記事の必要性を提示します。

うまくいかない時は?

  • ありきたりなアイデアしか出ない: AIへの指示に制約を加えてください。「初心者向けの一般的な内容は除外して、玄人向けのニッチな切り口を出して」や「競合他社が書いていない、逆説的な視点を出して」と指示することで、提案の鋭さが増します。

【外部トレンド編】「今」の文脈を自動で掴む

自社の情報だけでなく、外の世界で何が起きているか(文脈)を知ることも重要です。ただし、情報収集に時間をかけすぎてはいけません。ここはツールで自動化してサボりましょう。

3. SNSの話題 × Grokで「文脈」に乗る

ターゲット顧客がいま何に興味を持ち、何に怒り、何を面白がっているか。この「文脈」を捉えた記事は、強く刺さります。

X(旧Twitter)のリアルタイム情報に強いAI「Grok」のタスク機能を使えば、SNSの監視を自動化できます。

具体的な手順

Grokのタスク機能を使い、定期的に以下の指示を実行させます。

プロンプト例

昨日、【自社の顧客層(例:人事担当者)】がよく見ていそうなアカウントが投稿したポストのうち、特に議論が活発だったり話題になっていたりするものをリストアップしてください。必ず投稿のリンクを含めてください。

自社のターゲットに合わせて、「経理担当者」「エンジニア採用担当」など対象を書き換えてください。

うまくいかない時は?

  • 関係ないエンタメ情報ばかり混ざる: ターゲットの定義が広すぎます。「マーケティング担当」ではなく「BtoBのSEO担当」のように詳しく指定するか、監視対象としたい具体的なインフルエンサーのアカウント名をいくつか例示してください。

【重要】どう「自社独自の企画」に落とし込むか

SNSの話題をただ紹介するだけでは、ニュースのまとめサイトと同じです。ここに「自社のスタンス」を掛け合わせることで、独自コンテンツに変わります。

  • 話題(Trend)× 逆張りの意見(Opinion): 「〇〇がトレンドですが、現場の実感としては逆です」と、プロとしての見解を述べる。
  • 話題(Trend)× 自社の解決策(Solution): 「このトラブルが話題ですが、弊社ではこうやって未然に防ぎました」と、具体的なノウハウを公開する。

4. 専門メディア × ワークフロー自動化で「ノイズ」を消す

業界情報は追いたいけれど、毎日複数のメディアを巡回するのは苦痛です。しかも、RSSリーダーには「セミナーの宣伝」や「初歩すぎる内容」など、自分には不要な情報も多く含まれます。

「n8n」などのワークフロー自動化ツールを使って、「自分に関係ある記事だけが届く仕組み」を作りましょう。

具体的な手順

専門メディアのRSSフィードをn8n等で取得し、新着記事のタイトルと概要をAIに渡して判定させます。判定結果が「読むべき(A判定)」だった場合のみ、SlackやTeamsに通知を送るように設定します。

ここでの肝は、AIへの指示出しで「除外条件」を厳しく設定することです。

プロンプト例

SEOやコンテンツマーケティングの担当者が業務の参考にするべき記事を探してください。ただし、ウェビナーの開催告知や、ツールの単なるプレスリリース、初心者向けの「〇〇とは」といった定義解説は不要です。

うまくいかない時は?

  • 通知が多すぎて読めない: 「A判定」の基準を厳しくします。「実務経験3年以上の担当者が読むべき内容に限る」といった条件を追加してください。

【重要】どう「自社独自の企画」に落とし込むか

ニュースの速報性では大手メディアに勝てません。我々が狙うべきは「検証」と「対策」です。

  • ニュース(News)× 自社データ(Verification): 「Googleの仕様変更がありましたが、弊社の管理する〇〇件のデータではこれくらい影響が出ました(または影響はありませんでした)」と、一次情報を提示する。
  • ニュース(News)× 現場のToDo(Action): 「この変更を受けて、我々がすぐに現場で行った3つの設定変更」をチェックリストとして公開する。

まとめ:まずは「10分」で試してみてください

ここまで4つの方法を紹介しました。

  1. 商談議事録の分析(自社の一次情報)
  2. アクセス上位ページの分析(自社の一次情報)
  3. SNSの話題収集(外部トレンド)
  4. 専門メディアの自動収集(外部トレンド)

もし「どれから手をつけるべきか」迷ったら、1つ目の「商談議事録の分析」だけを試してみてください。

直近の商談議事録を1つか2つ用意して、匿名化し、NotebookLMに入れて「顧客が一番不安に思っていることは何?」と聞いてみる。これなら10分もあれば終わります。

自分の頭でウンウン唸るのをやめて、AIにデータを見せる。 たったそれだけで、「あ、これ記事にできる」という発見が必ずあります。まずは手元のデータを使って、AIに「引き出して」もらうことから始めてみてください。

毛塚 智彦

この記事を書いた人

毛塚 智彦

2006年からデジタルマーケティングを開始し、2008年にサイトエンジンを創業しました。 SEO、コンテンツマーケティングが得意です。立ち上げた直後のメディアから、数千万PVあるようなポータルサイト・ECサイトまで、幅広く関与してきました。 業務ではマニュアル作成などの仕組みづくり、事業立ち上げ、採用などを担当しています。

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