EFO(エントリーフォーム最適化)とは、応募フォームの構成や設計を改善することで、ユーザーがスムーズに入力を完了できるよう支援し、離脱率を下げて完了率を高めるための施策です。
目的は、せっかく流入してきたユーザーの熱量を無駄にせず、より多くの応募につなげること。とくに人材紹介のように“人が主役”のサービスでは、フォームの完成度が応募者獲得の鍵を握っています。
目次
求職者はなぜ応募フォームで離脱するのか?
求職者が応募フォームで離脱する理由は「面倒くさい」の一言に尽きます。応募フォームが長かったり項目数が多いことで登録をする気がなくなってしまうのです。
Appcast の調査では、応募開始者の 92 % が完了前に離脱していることが判明しました。平均応募完了時間は 4 分 52 秒を超えると離脱が急増します。同じくAppcastは「応募の67 %がスマートフォン経由」と報告しています。ところがモバイルのコンバージョン率はデスクトップの約半分に留まるため、流入を取りこぼしているのが実情です。
FIeld of Talent「Mobile vs. Desktop: Trends in Job Search」
EFOの目的は「熱量がそれほど高くなくても応募したくなる」ようにすること
人材紹介会社様からサイト集客や応募数増加のご相談をいただく際、EFOの話をすると「フォームの内容を変えるという発想がなかった」「そこまで重要だと思っていなかった」「社内で決まっているので変更できない」「システム的に対応が難しい」といった反応が、実に半数近くを占めます。
私たちが支援する立場としてまず大切なのは、この認識のギャップを埋めることです。それは非常に重要であると同時に、決して容易なことではありません。
ただ、すでに課題として認識されている時点で、大きな一歩を踏み出していると受け止めていただけたらと思います。
たとえ応募フォームが長くても、ユーザーがフォームに到達した時点でサービスへの関心が十分に高ければ、離脱を防ぐことができます。それが理想的な状態です。
しかし実際には、ユーザーはさまざまなチャネルや検討段階から流入してくるため、すべての人を非常に高い熱量の状態に導くことは困難です。
だからこそ重要なのは、「熱量がそれほど高くなくても応募したくなるようなフォーム設計」を目指すことです。
人材紹介会社向けEFOの考え方
フォームの必須項目は最小限に抑える

基本的に、入力項目は少なければ少ないほど応募フォームの完了率は高まります。
人材紹介会社様でよく見られる失敗例の一つが、「応募時点では必要のない情報までフォームに盛り込んでしまう」ことです。
これは「最初にできるだけ多くの情報を取得しておいたほうが、その後の対応や成約に有利になる」という発想から来ています。しかしその結果、そもそもの応募数自体が減ってしまっては本末転倒です。
どの項目を残すかの判断は簡単ではありませんが、「その項目を入れることでどれだけの離脱リスクがあるか」と「それでも入力してもらうべき必然性があるか」を天秤にかけて判断することが重要です。実務上、リード情報として必要なのは「氏名」「生年月日」「電話番号」「メールアドレス」程度で十分と考えられます。
例外として、「コンサルタントやインサイドセールスなど、一次対応の人手が不足しており、あえて応募数を絞るために項目数を多くしている」というケースもあります。
しかし、マーケティングの観点からリードの最大化を目指すのであれば、基本的にはおすすめできません。
そのようなご相談をいただいた場合、私たちとしてはむしろ「一次対応の体制を増強できないか」といったご提案をさせていただくことが多いです。
入力ミスや「わからない」を減らすUI設計を行う

求職者がフォームで離脱する瞬間は「正しく入力できているか自信がない」と感じたときです。人材紹介の応募フォームには、現職年収・希望勤務地・在籍期間など迷いやすい項目が並びがちで、エラー表示が遅れると離脱率が跳ね上がります。
画面例のように必須マークを明示し、入力内容をリアルタイムで判定して赤枠と具体的な修正メッセージを即提示すれば、不安を解消できます。さらに「年収は半角数字のみ」「勤務地はプルダウン選択」「電話番号はハイフン不要」といった入力支援を併用することで、打鍵数を減らしミスを防止します。
狙いは、コンサルタントが面談で深掘りするための最低限かつ正確な情報だけを手早く取得し、応募ハードルを下げることです。
モバイルファーストのステップフォームで“親指完結”の導線をつくる

応募者の多くはスマートフォンから流入してくるため、フォームは 片手・親指だけで完結できる ことが大前提です。
モバイルでは画面幅が狭く、フォームが縦長になりがちです。入力欄がずらりと並んでいるだけで、求職者は「面倒だ」と感じて離脱しやすくなります。そこで有効なのがステップフォームです。
- 質問が単純な場合:1質問=1画面 にすると集中して入力できます。
- 項目が多い場合:関連する質問を 同じ画面にまとめる とスムーズです。
まずは氏名・メールなどの必須項目だけを1画面目に置き、「次へ」ボタンで2画面目以降へ誘導しましょう。全体を3~4ステップ・6〜8項目に収めると心理的ハードルが下がり、「ここまで来たから最後までやろう」という意欲が高まりやすくなります。
さらに、画面上部に残りステップがわかる進捗バーを設置し、画面下には親指で押しやすい固定CTAボタン を配置すると操作に迷いません。
こうした構成に整理するだけで、単一ページ型より応募完了率が大幅に向上するケースが少なくありません。
チェックリスト:公開前に確認する10項目
公開直前のフォームは、見た目が整っていても “ちょっとした抜け” があるだけで応募完了率が大きく下がります。そこでリリース前に必ず確認したいポイントを10 項目に絞ってまとめました。ブラウザ上で簡単に確認できる項目ばかりなので、エンジニアでなくてもチェックできます。ブラウザ操作だけで手軽に検証できる項目ばかりなので、エンジニア以外の方でも問題なく確認できます。リストを上から順に見ていくだけで、「ラクに入力できて迷わず安心」なフォームかどうか一目で判別できます。
番号 | チェック項目 | 確認内容 |
---|---|---|
1 | 必須項目の最小化 | 氏名・メール・電話など「絶対に必要な 6~8 項目」だけに絞られているか |
2 | 入力順とタブ順 | Tabキーで移動すると、カーソルが画面の上→下・左→右へ順番に進み、途中の項目を飛ばしていないか |
3 | リアルタイムエラーメッセージ | 入力漏れや形式ミスがあるとすぐに赤枠と修正文が表示されるか |
4 | モバイル 1 カラム化 | スマホ幅でも横スクロールが起きず、文字が読める大きさ(16px以上)になっているか |
5 | 固定CTA | 「応募する」ボタンが画面下に固定され、スクロールしても常に指が届くか |
6 | 進捗バー表示 | 3~4ステップなら「あと◯問」を表示し、短いフォームでは表示を省いているか |
7 | タップ領域とキーボード | ボタンや選択肢の高さが48px以上あり、電話番号欄などで数字キーボードが自動表示されるか |
8 | 信頼性のアピール | SSLマーク・個人情報の取扱い・利用目的が最初の画面で見える位置にあるか |
9 | 計測タグの実装 | GA4で「入力開始」「ステップ進行」「送信完了」がきちんと計測できるか |
10 | 多端末テスト | iPhone・Android・主要ブラウザで表示崩れや入力エラーが発生しないか |
EFOで始める求職者との信頼構築
求職者が感じる「長い・迷う・不安」というストレスは、EFOで大きく軽減できます。必須項目を絞って画面を分け、リアルタイムでエラー表示を行えば、スムーズで直感的な操作が可能になります。さらに、SSLやプライバシー表記を冒頭に置けば安心感も伝えられます。
EFOは単なる入力支援ではなく、企業の姿勢を示す体験設計です。丁寧なフォームは「この会社は自分のことを考えている」と感じさせ、応募意欲の後押しになります。求職者に選ばれるために、まずはこの“見落とされがちだった接点”から整えていきましょう。