検索エンジンで旅先を調べる行動は世界中の日常となりました。多言語コンテンツは「行き先を決める瞬間」にリーチできますが、ネイティブ感覚とコスト効率を両立した制作体制の構築は、多くの担当者が抱える共通課題です。
この記事では企画立案から運用改善まで、チームが即実践できる手順を体系化してまとめます。
目次
多言語コンテンツ作成・SEOのポイント
検索ユーザーが母語で入力するクエリは、文化・習慣・情報取得経路によって大きく変化します。Googleは専門性と独自性を各言語ごとに評価すると明言しており、多言語コンテンツにおいてもユーザーニーズに対して適切に応えることが重要となります。
多言語SEOを成功させるうえで押さえるべきポイントは次の3つです。
- 各言語で“検索される表現”を正確に把握すること
- 検索意図に沿った深度と体験価値を示すこと
- 時差・季節性・トレンドで変化する検索意図を確認し、継続的に改善(リライト)を行うこと
多言語記事の2つの作成方法
海外ライター主導モデル
海外ライター主導モデルは、ネイティブのライターが執筆し、最新トレンドと生活者目線を取り入れながら作成する方式で、検索ユーザーに近い視点と鮮度を記事に取り込めるのが最大の魅力です。
現地の検索トレンドやSNSの空気感をダイレクトに反映でき、ユーザーが本当に知りたい疑問や最新キーワードに高い精度で応えられます。また、ドラマのロケ地巡礼や期間限定イベントなど、流行を敏感に追うテーマでも“今”のリアルを逃さずキャッチできます。
SERPs+現地検索トレンド調査
まずは対象国・地域のSERPs・関連ワード・PAA(People Also Ask)・サジェストを洗い出します。次にキーワード検索ツールの「国別データベース」で検索ボリュームと競合度を取得。
現地のSNSで話題性をチェックすると、記事に織り込むべきトレンドや表現が立体的に見えてきます。
海外ライターにSEOを考慮してもらうためのディレクション
海外ライターは母語には長けていますが、SEO構成を読み解き、検索ニーズを正しく汲み取れる人材は意外と少数です。
そのため、「狙うキーワード」「読者像」「競合との差別化ポイント」の確認・判断手順を丁寧にレクチャーすることが不可欠となります。
説明後は、Googleドキュメントなどクラウド型ツールのコメント機能を活用し、
- 構成案の段階で検索意図とのズレを指摘
- 本文ドラフトに対して見出しや内部リンクの最適化を指示
- 公開後はGoogleサーチコンソールの数値を共有し改善ポイントを提示
といったフィードバック体制を構築すると、時差があってもテンポ良く修正が進みます。
公開前品質を守る「校正&ファクトチェック」フロー
公開前には「言語校正」「事実確認」を行います。日本人がディレクションを行っており言語がわからない場合は、外部チェックを依頼するなどの工程が必要です。ライターが複数人いるのであれば書いた記事を別のライターがチェックするフローを組むのもよいです。
また、言語がわからなくてもできる作業は社内で巻き取るなど、案件によって最適な方法を模索していきます。例えば日本の鉄道路線名は外字や略称ゆれが起きやすいため、観光庁・鉄道公式サイトとの照合などが必要ですが、言語がわからなくてもできる作業です。
効果を発揮するテーマ
- ロケ地巡礼・限定イベント案内
- 季節限定イベント&ポップアップの速報ガイド
- 宗教・文化背景に配慮した参拝マナー解説
日本語執筆+翻訳モデル
海外版SERPs×SEOツールでキーワード選定
日本語で企画した記事構成を起点に、まずはVPNなどで対象国・地域のSERPsを再現し、関連ワード・PAA・サジェストを洗い出します。これにキーワード検索ツールの国別データベースを組み合わせれば、想定キーワードごとの検索ボリュームと競合度を数値で把握可能です。
日本語で企画した記事構成をベースに、海外版Googleで「地域+悩み語」を多言語検索し、出現ワードをスプレッドシートで比較。ここに国別の検索ボリュームを合わせると、現地ユーザーが実際に使う語順や助詞が浮き彫りになります。
ユーザー体験を高める「文化補足」テクニック
日本語原稿をそのまま訳すのではなく、宗教・マナー・支払い手段など文化差が影響しやすい箇所には注釈を入れて誤解を回避します。
たとえば銭湯マナーの記事なら「刺青の可否」「脱衣所での撮影禁止」など、日本固有のルールを脚注や囲み枠で補足するとUXが向上し、平均滞在時間の伸びにつながります。
自動翻訳時のポイント
翻訳はDeepLやGoogle翻訳APIを使用し、Glossary機能で固有名詞の揺れを防止すると良いです。翻訳後にネイティブ校正者が「意味の通りやすさ」「不自然な直訳表現」を重点チェックすると、品質をさらに高めることもできます。
また、翻訳時のブレが少なくするために日本語文章作成時のレギュレーションを定めます。翻訳ツールにもよりますが、例えば弊社の場合は「だ・である調」で統一することで表現のブレが収まる傾向がありましたので、レギュレーションとしております。
効果を発揮するテーマ
- 定番ルール・マナー解説
- 交通・チケット比較
- 旅行前計画・予算目安ガイド
共通の成功ポイント
検索ニーズを的確に捉える
キーワードは「季節×場所×悩み語」を3語以上で組み合わせ、まず競合が弱い順に並べ替えます。SERPsを確認し、旅行代理店や口コミサイトが多い場合は体験談・価格比較・写真付きマップなど独自要素を盛り込みましょう。
キーワード候補は「季節×場所×悩み語」を3語以上で掛け合わせ、検索ボリュームと競合度を一覧化して“低コストで勝てる順”に優先度を決定します。
データで改善を回し続ける
GoogleサーチコンソールでCTRが低いクエリを洗い出し、タイトルとメタディスクリプションをA/Bテストしましょう。GA4では国・言語別の平均エンゲージメント時間を確認し、訳語や事例がユーザーに響いているかを評価します。改善ポイントはスプレッドシートで共有し、条件付き書式で優先度を色分けすると、チーム全体でPDCAをスピーディーに回しやすくなります。
さらに、スポット・店舗・商品の価格改定や閉店情報を定期的にチェックして記事を更新します。場合によっては、紹介件数を増やすだけでも検索流入が伸びることがあります。
まとめ
旅前の迷いを解くコンテンツはオンラインで最初に届ける“おもてなし”です。検索意図を汲み取り、ネイティブ視点と日本発の専門知を組み合わせて改善を重ねれば、コンテンツは24時間働き続け、地域とユーザーを結び付けます。
まずは、旅先でお客さまが戸惑いがちなポイントや知りたいことを一つ選び、その答えを母語で届ける記事から始めてみましょう。そこから広がる“わかりやすさ”が、訪日体験の満足度を着実に押し上げてくれます。