顧客がどんなチャネルを経由してコンバージョン(CV)したかを把握することで、チャネルごとの貢献度をキャッチアップし、適切な予算分配やマーケティング施策などが実現できます。これらの目的で活用される分析手法「アトリビューション分析」について、やり方や事例など詳しく解説します。
アトリビューション分析とは?
自社のWebサイト上で購入や会員登録、お問合せなど、何かしら会社側が期待しているユーザー行動のゴールがあります。その最終地点に至るまで、Web広告を見たりSNSを見たりと様々です。ユーザーがゴールに到達する(CV)までどんなプロセスだったかを確認する分析方法をアトリビューション分析と言います。
ユーザーが購入に至ったサイトのみを評価するのではなく、購入のために貢献したチャネルも評価するため、有効な広告と意味のない広告を振り分けることもできます。アトリビューション分析はCVまで様々なサイトや広告を経由するビジネスモデルで活用されており、以前は金融業界で投資や株などの利益率を測定するために利用されていました。それからWeb広告が主流になり、デジタルマーケティングの現場でも活用されています。
アトリビューション分析はなぜ必要?
CVまでの道のりを分析するアトリビューション分析はなぜ必要なのでしょうか。これはサッカーのゴールシーンに例えることができます。
サッカーでゴールが決まる時、得点者は1人ですが多くの人が関わっています。ゴールを決める選手だけ集めても、強いサッカーチームにはなりません。ラストパスを送る人、ボールを奪って攻撃を始める人のように、個々の役割を評価して強化していくことで強いサッカーチームになります。
少し話がそれましたが、この話と同様に、効果的なCVまでの道のりを作るためにアトリビューション分析は必要なのです。具体的なポイントに分けて解説します。
CVに近いチャネルのみ注力される事態を防ぐ
これは上記のサッカーチームの例えに繋がりますが、CVから遠くてもユーザーが意思決定をする際に役割を果たしているWebコンテンツやSNSの運用などがあります。これらが直接CVへ影響しないため軽視すると、CVするチャネルばかりに予算やリソースを割くことになり、CV率が下がるだけでなく、見込み客の収集にも悪影響を与える可能性があります。
ユーザーからの信頼性や関係構築を促進させる
直接CVするチャネルは、営業要素の強いものです。そのようなコンテンツばかり発信している企業は、ユーザーから良い印象を持たれません。直接CVしないチャネルには、ユーザーにとって役立つもので、信頼を得て関係構築する効果があります。バランスの良いマーケティング戦略構築のため、アトリビューション分析は必要と言えます。
アトリビューション分析に向くケースと向かないケース
アトリビューション分析には有効ではないビジネスモデルもあります。向き不向きの基準は以下のようにまとめられます。
基準 | 向いているケース | 向かないケース |
CVまでのチャネル数 | 多い | 少ない |
CVまでのキーワード数 | 多い | 少ない |
CVの指名検索の割合 | 高い | 低い |
CVまでのプロセス | 多い | 少ない |
また商品単価が安く、検討から購入までのスピードが速いケースはアトリビューション分析を行っても効果的ではありません。一度自社のマーケティング戦略にアトリビューション分析が必要か確認しましょう。
7つのアトリビューションモデル
アトリビューション分析は、各チャネルでユーザーがどんな行動をしたかを基準に評価方法が変わります。それぞれの種類を紹介します。
終点
これはユーザーがCVするまでに最後にクリックしたチャネルを評価する方法です。従来の広告を評価する方法で使われており、短期間や短いプロセスのビジネスモデルで推奨されてます。
起点
これはユーザーがCVする初めにクリックしたチャネルを評価する方法です。ビジネスをスタートさせた段階の広告など、認知度が低い状態のユーザーを分析するときに利用されます。
線形
これはユーザーがCVするまでに経由したすべてのチャネルを平等に評価する方法です。オーソドックスな分析方法で、ユーザーが商品購入までにより多くのチャネルを経由する複雑な構造の場合に良く利用されます。4つの広告を経てCVした貢献度を100で表す場合、『|25|25|25|25|』となります。
接点
これはユーザーがCVするまでに経由したチャネルの、最初と最後のチャネルを評価する方法です。成果までのプロセスで、どこから入り、どこでCVしたのかを評価したい場合に活用されます。例えば4つの広告を経てCVした貢献度を100で表す場合、『|40|10|10|40|』となります。
減衰
これはユーザーがCVするまでに経由したチャネルのうち、最後に触れた順番から評価する方法です。広告の価値を明確にしたい場合に利用され、4つの広告を経てCVした貢献度を100で表す場合、『|10|20|30|40|』となります。
フルパス
これはユーザーがCVするまでに、「ファーストコンタクト」「見込み客になったチャネル」「機会創出したチャネル」「CVしたチャネル」の4つで評価します。ユーザーが購入までに時間がかかる場合に有効とされています。CVした貢献度を100で表す場合、『|22.5|22.5|22.5|22.5|』となり、残りの10をそれぞれのチャネルの間で均等に割り振られます。U型と呼ばれる評価方法もフルパスと同様です。
W型
これはフルパスのCVしたチャネルを除いた3つを評価する方法です。見込み客となったタイミングが重要な場合によく使われる分析方法になります。CVした貢献度を100で表す場合、『|30|30|30|』となり、残りの10をそれぞれのチャネルの間で均等に割り振られます。
Googleアナリティクスでアトリビューション分析
身近なところでアトリビューション分析を活かせるものがGoogleアナリティクスです。Googleアナリティクスには「アトリビューション モデル比較ツール」が標準搭載されているため、特別なツールなどを導入せずに分析できます。
具体的な流れ
Googleアナリティクス上での分析方法はとてもシンプルです。
- Googleアナリティクスのレポート画面から「コンバージョン」→「アトリビューション」→「モデル比較ツール」を選択。
- 「vs」を左クリック→アトリビューションモデルを7種類から選択(複数選択可)
- それぞれCV数に基づいたアトリビューションモデルで数値が表示
Googleアナリティクスでおすすめのアトリビューションモデル
これまでGoogleアナリティクスでアトリビューション分析をしたことがない方の場合、いきなりフルパスやW型のような分析方法に取り組むには難易度が高いものです。ますは「ファーストクリック」「ラストクリック」「線形」の3つで分析を始めましょう。
まとめ
アトリビューション分析はそれぞれのチャネルの効果を測定するために重要ですが、あくまで仮説検証するための材料です。データを基に、適切な施策やコスト分配が重要になります。運用するチャネルの数が年々増えている現代のビジネスモデルにおいて効果的な分析方法なので、ぜひ一度活用してみてください。